映画と小説を見比べて -「横道世之介」を見て-

2014/02/04 12:46日記的な 映画 

やまー。
昨年末からまたたくさん映画を見始めるようになったので音楽とは全く(でもない?)関係ないですが、印象深かったものについての観覧記録を残していこうと思います。

映画「横道世乃介」を見ました。DVDですが。

大学入学で上京してきた横道世乃介が東京で過ごす一年間を描く青春ラブコメディ。
他愛もない日常の中で大学内外で出会った人々との交流が時間の行き来の中で横道世乃介と言う人物を次第に浮き彫りにしていく...。

泣きました。
映画の1/3ぐらいは泣いてた気がする。

今の自分に置き換えてみても学生時代の頃を振り返って「あいつ面白い奴だったなぁ」と懐かしむことはあるし、自分は誰かにとっての世乃介になれてるんだろうか?と思うと急にセンチメンタルになったり...。

もし自分が大学生の時にこの映画を見たらなんて思うだろうか。
その時の自分の環境に置き換えて見るのか、それともひたすら吉高由里子かわいー!!!
と言い続けるのか。

そう。吉高由里子。
...最高です。

映画を見た後に原作も読んだんですが、原作に出てくる与謝野祥子より映画の吉高由里子演じる与謝野祥子の方が数倍かわいい。
小説のような創作の世界の中だからこそ描ける際立ったフィクショナルな存在...にも関わらず、吉高由里子が演じる与謝野祥子は物語の中で確実に「そこにいる」リアリティがありました。

ただ、映画と小説では伝えようとしている内容が違うように思えた。
一般的なことかもしれないけど、映画の方が要素がそぎ落とされてて伝えたい内容が明確、あるいは監督もしくは脚本がテーマとする内容に話が集約されていく感じ。

映画版では世乃介の人柄が関わった人の後の人生に与えた影響、人生への影響とまではいかなかったかもしれないけど大切な思い出、ひいてはライムスター宇多丸さんの評をそのまま引用するのであれば「懐かしさとは何なのか?」を見た人に考えさせる部分に集約されている。

しかもその集約した部分が脚本、演出、撮影、そして役者の演技で見事に描かれているからこそ映画「横道世乃介」は面白い。

一方、小説版の「横道世乃介」はより群像劇としての印象が強い。
物語としてはある一つの事実に向かって進んでいくところ、この点に関しては映画も小説も同じだけど、小説版の方が登場人物の特徴や環境、エピソードが細かく描きこまれているため、登場人物一人一人への愛着が深くなる。結果的に主役の横道世乃介と与謝野祥子2人のストーリーと言うよりはそれ以外の人物や花小金井、新宿、赤坂、市ヶ谷、世田谷...を含む全体のストーリーと言う感じがする。

この感覚は「桐島、部活やめるってよ」でもあった。いや、「桐島...」の方が強かったかも。
映画版の「桐島...」は魅力的なキャラクターは多数いたものの最終的には前田が話の中心にいて映画のクライマックスも前田が中心に立っている。
一方の小説版の「桐島...」では登場人物の描きこみの細かさもさることながら物語の上でも非常に盛り上がりを見せる1つのエピソードが丸ごとカットされている。

映画版と小説版のどっちがいい?と言う話ではなく「横道世乃介」と「桐島、...」はどちらの映画版も小説版も面白い。たまたま映画を先に見たので後から小説を読むと映画の登場人物の人となりや物語の中のシーンを小説が補完してくれてるように思えて映画を振り返ってより深く楽しめた。

もう一つ「横道世乃介」を見ながら思い出したのが「ノルウェイの森」。「横道世乃介」の時代設定は1987年らしいが、映像を見るともう少し古い時代の東京に見えたので「ノルウェイの森」が頭に浮かんだのかもしれない。3作品の結末はそれぞれ全く違うけれど青春群像劇というくくりでは3作品とも同じテーマの作品といってもいいのかも。

この「ノルウェイの森」については小説の中で今でも強烈に印象に残っているシーンと映画の中で描かれているシーンが近かった(気がする)ので映画版だからこそのそぎ落としや集約、と言う感覚は薄かった。むしろ小説の小難しい世界観を損なわずに映像化できたなぁと言うのが感想。


それぞれの映画を一言で表すと

1.「横道世乃介」...懐かしさ、郷愁
2.「桐島、部活やめるってよ」...痛快、パーマ
3.「ノルウェイの森」...暗い、心の爪痕

と言う感じ。どれも素晴らしい映画・小説なので未見の人はぜひオススメしたいです。
小説は書店やamazon、映画はいずれもDVDやiTunesでも購入可能です。

「横道世乃介」は本当に面白い。会う人全員に勧めたいが、「横道世乃介」を見たこと読んだことでこうやって映画と小説の関係について考えるきっかけになったと言う点でも中々忘れられない映画になりました。