BiSHの「身勝手あいにーじゅー」「beautifulさ」の歌詞について書いてみましたよ。

2016/01/24 21:46編集後記 BiSH 歌詞について 

やまー。

前回のBiSHの『「ウォント」「デパーチャーズ」の歌詞について書いてみましたよ。』はいかがでしたでしょうか。
好評かどうかは分かりませんが、BiSHの歌詞についてはもっと書きたいことがあるので続編です。

前回はモモコグミカンパニーの歌詞について解説しましたが、今回はハグ・ミィ作詞の「身勝手あいにーじゅー」とリンリン作詞の「beautifulさ」についてです。

歌詞を読み方、楽しみ方の一つに「書き手のフィルターを通して物事を見ることができる」というのがあると思うのですが、この2つの歌詞はそれがとてもよく出ている良作だと思います。

「身勝手あいにーじゅー」/作詞:ハグ・ミィ

ウチのサイトとは関係ないと思いますがハグ・ミィはこの歌詞を「ガチ恋」の気持ちになって書いたとのこと。なかなかディープなテーマだと思います。

こういう人によって千差万別な考え方や価値観があるものをテーマにすることは、余計に書き手の価値観やものの見方が浮き出てくるのでとても面白いです。

さて、ハグ・ミィが見る「ガチ恋」は...

【歌詞解説(歌詞の内容はsoundcloudで)】

歌詞全体の内容は、あるガチ恋ヲタの某くんがガチ恋相手の某ちゃんに思いを独白する様子が描かれています。
ハグ・ミィがこの某くんに自分自身を重ねているのか、"こうあって欲しい"と言うガチ恋像をハグ・ミィが描き出しているのかまでは分かりませんが、この某くん、相当にハードボイルドでロンリーウルフでブルージーです。

「あの子のことを誰よりも想っているのは僕なんだ!」と思うガチ恋の性質上、孤高なスタイルに陥りやすいのでハグ・ミィもそれを上手にキャッチしてるな、と思います。
(ガチ恋の人ってグループの中にいてもどこかぼっちな雰囲気を出してたりしませんか?)

さらにガチ恋の性質という点で言うと、某ちゃんのことを想うあまり、どんどん気持ちがエスカレート&こじれていってる様子が描かれてるのがとっても面白いです。

1番では某ちゃんへの激情を語る某くんですが、2番で「続きは僕が紡ぐんだ」「君を叫ぼう」に変わってたり、落ちサビじゃ「そうさヘタな歌でも 愛をこめて歌うよ」って、ちょっと待てと。話変わってね?某ちゃんの話じゃなくてお前の話になってね?と。

ガチ恋に限らず想いが強すぎるあまり、思考の入り口と出口がまったく違っちゃってることってよくあることなので思い当たるフシがある人も少なくないと思うのですが、この歌詞から伝わってくるハグ・ミィがとらえたガチ恋像はかなりリアル。しかも、この歌詞に「身勝手あいにーじゅー」とシンプルかつストレートすぎるタイトルを付けたセンスもお見事だと思います。

歌詞の内容以外の部分でも「声、、、、声」という特徴的な言い回しを繰り返し使っているのは"歌の文章"としての歌詞の特徴を上手に使ってると思うし、「カミサマ アイノウタ」のフレーズは字面だけみると祈りの言葉みたいにもみえるのがキモコワ感すらあります(褒めてます)。

こういうネガポジ気質な歌詞にこれでもか!っていうぐらいのハードロックが乗っているのがまた素晴らしいんですが、この曲をライブで見るとどうしてもハグ・ミィの姿を追ってしまう。「身勝手あいにーじゅー」はそんな歌だと思います。


beautifulさ/作詞:リンリン

「FULL METAL JACKET」の新録曲の中で一番最初に気に入ったのはこの「beautifulさ」かもしれません。

無口担当が故に内面にものすごく強烈な毒を持っている(ように見える)リンリンが書いた「beautifulさ」は、その毒っ気も端々に感じさせながら全体的には超々ポジティブ。
分かりやすすぎる青春パンクなアレンジも重なって、聴いていると自然と力が湧いてくる、前向きになれる内容でした。

【歌詞解説(歌詞の内容はsoundcloudで)】

冒頭に歌詞を読むことで「書き手のフィルターを通して物事を見ることができる」と書いたのですが、それが最も表れやすいのは"モチーフ"にあると思っていて、今回のアルバムの中で(僕にとって)モチーフの使い方が一番印象的興味深かったのが「beautifulさ」の歌詞に出てくる「とげとげ」でした。

この曲を聴いて「とげとげ」のフレーズを聴き逃す人はまずいないでしょうし、逆境や苦境を"茨(いばら)の道"と書くならともかく「とげとげの道」と表現した歌詞を僕は初めて見ました。

「とげとげの道」という言葉はかわいらしくて表現としては幼稚と言えるかもしれないですが、この言葉があるからこそ描けている「beautifulさ」の"良い意味での軽さ"、"否応ないポジティブさ"になっているように思います。

しかも、この歌の振付がまた素晴らしいんです。「とげとげ」のフレーズに合わせて歌ってるメンバー以外の全員が両手で頭に角を生やした格好で跳びはねてる様子があまりにも歌詞の世界観とマッチしていて、見てたら絶対マネしたくなるし、初見の時はちょっとバカバカしすぎて笑ってしまいました。この振りを考えたらしいアイナ・ジ・エンドさん最高です。

少なくとも僕には逆境に対しての「とげとげ」というボキャブラリーや価値観はまるでないので、歌詞を読みながらこういう"新発見"があるとそれだけで嬉しくなるし、書いた人への興味関心も湧いてきます。

あと、軽さ、ポジティブさ、バカバカさを中心に解説をしましたが、内容をきちんと追っていくとこの歌詞はとってもエモーショナルな側面も持っています。

「泣いた後に 咲くその花は so beautiful beautifulさ」

のフレーズにギュッと心を掴まれた人もいるんじゃないでしょうか。

大笑いしながら大号泣できる。「beautifulさ」はそんな歌だと思います。

【追記】リンリンがOTOTOYの単独インタビューで「beautifulさ」の歌詞について語っています。ここの解説とは違う内容になっているのでぜひ読んでみてください。

...と以上で今回の歌詞解説はおしまいです。
前回も最後に書きましたが、歌詞の受け取り方は聴いた(読んだ)人の数だけあるべきだと思います。また、書き手の意図と読み手の解釈が全然違うことも歌詞の面白さの一つだと思うので、批判を恐れずに色々書くのも面白いんじゃないかなぁと思っています。

ちなみに「FAKE METAL JACKET」についてはあと2曲、どうしても書きたいことがあるので、それはまた次の機会に。