"ハイレゾ"について思うあれこれを音楽サイトOTOTOYさんに質問してみましたよ

2015/01/01 19:00編集後記 ハイレゾ 

やまー。

「ハイレゾ」って最近、耳にしたり目にしたりすることありませんか?
高音質な音源と言うことは何となく分かってる人もいるかと思いますが、詳しい話はどうも...と言う人も多いんじゃないかと思います。

恥ずかしながら僕もその中の一人だったのですが、ある時OTOTOYで配信していたハイレゾ音源「Negiccoと学校」でその音質のあまりの違いに結構なカルチャーショックを受けました。

それ以降ハイレゾが気になり、「ハイレゾについてお話できる方いませんか?」とOTOTOYの副編集長西澤さんにオファーしてみたところ、取材をご快諾いただき、ちょうどOTOTOYさんが渋谷ヒカリエで開催していたイベント「OTOTOY DSD SHOP 2014 -Point of No Return-」の会場でOTOTOYの編集長飯田仁一郎さんへのインタビューをさせてもらいました。

オファーから取材までがあっと言う間だったこともあり、無知や勘違いも大アリですがあえてリスナーに近いスタンスでハイレゾについて感じている素朴な疑問・質問を聞かせていただきました。

OTOTOYさん、ご協力いただきありがとうございました。やっぱハイレゾはOTOTOYだなー!!

OTOTOY飯田仁一郎編集長
OTOTOY飯田編集長。とても優しい方です。


ハイレゾ音源をOTOTOYが始めたきっかけ

飯田さんがOTOTYでハイレゾ配信をやろうと思ったきっかけについて教えてもらえますか。

飯田 僕はミュージシャンなので(OTOTOY飯田編集長はバンドLimited Express (has gone?) のメンバー)、ミックスルームで鳴ってる音が一番いいと言う感覚とそれがマスタリングしてCDになった時に音が変わってる感覚が分かってたんです。ただ、OTOTOYが始まった時点ではmp3と携帯が主流だったんですよ。その音の悪さに気付いてて、初めはCDと同じクオリティのWAV音源を配信をしたいって話を会社やアーティストにしたんですけど、当時は「なんでそんなクオリティの高いマスター(データ)を渡さないといけないの?」とか「世の中は早い安いの時代になってるんだよ」って言われるんです。そう言われると僕のアーティスト根性が出てきて「アーティストはそんなこと一切求めてないです。いい音をちゃんと伝えて欲しいんです」って言うのがハイレゾをやろうと思った原点なんですよね。
そういう気持ちがあった中でクラムボンのmitoさんと「飯田くん、最近ミックスは24bit/48KHzのデータでやってるよね」って言う話をしてたんです。レコーディングは技術的にどんどんハイビットでハイレゾな音で録れるようになったので、そこで作ったものを入れる...僕らは"お弁当箱"って言う喩え方をするんですけど、お弁当箱になるCDもデカくならないといけなかったんですけど、DVD-audioやSACDがうまくいかなかったって言う時代の流れもあってCDのままで止まってしまったんです。じゃあ何ならこの大きい食べ物をそのまま伝えることができるか?ってなった時に"配信"だ、と。配信なら今鳴っている音をそのまま伝えられる、と思ってOTOTOYはその時に"HQD"(ハイ・クオリティ・ディストリビューション)って言う名前でクラムボンやtoeに声をかけて一緒にやり始めたんですよね。

それって何年ごろの話ですか?

飯田 「NOW!!!」というクラムボンの曲が、2009年に出ました。それがOTOTOYのハイレゾでは初です。

OTOTOY DSD SHOP
OTOTOY DSD SHOPの様子


ハイレゾは音楽の標準フォーマットになるのか?

いきなり核心的な質問なんですが、ハイレゾがこれから音楽を聴く標準的なスタイルになると思いますか?

飯田 よく聞かれるんですけど、そこは信じてるし、そこを推進する役目だと思ってるんですよ。でも、それで戦争を起こそうとかはもちろん思ってないです。ただミュージシャンが、いい音で人に伝えたいって言う衝動は、料理をする人がちょっとでも美味しいものを出したいって言うのと一緒だと思うんです。その気持ちは揺らいでないと言うか。
あと、さっきも言ったみたいに作る人と機材とフォーマット(CD)の話があるんですよね。実はエレクトロニクスメーカーもいつまでもCDがついてるコンポが売れるとは思ってないですよ。音源だっていつまでもCDフォーマットで売れるわけないです。時代遅れになっているので。【ガチ恋!】さんに載ってるアイドルだって、10年前のアイドルよりも進化してるって僕たちは信じてるし、山口百恵の時代とは違うし、今を投影してるし、もっと面白いことをしてる、っていうことと変わらないと思うんですよね。全てのアーティストが進化して、常に新しいことをしようと思ってるってことはクリエイティブなことだと思ってるので、フォーマットも発展して、聴くスタイルが新しくなっていくことは時代の必然だと僕は思ってます。

ただ、CDのフォーマットはまだ揺るがないところがありますよね。

飯田 どうなのかなぁ...

変わると思いますか?

飯田 僕もCDは買わなくなったし、周りの人もそうだし、海外はもちろん...。CDは終っていくと思ってるし、強く終わるべきだと思ってます。日本が一番...って愛国主義でもないんですけど、ヨーロッパにSpotifyとかを見せつけられて"これが世界の最先端ですよ"って言われたら悔しいじゃないですか。それで日本は?って聞かれた時に「まだCDなの?ダサいよね」って言われたくない。そういうプライドもあるので、CDに関しては変わるべきだと思ってます。そう言う意味では秋元(康)さんは良くも悪くもやらかしてくれたな、って思ってますね。彼がやったことでもう一回CDがドーンて来たけどそれによって終わりも早くしたな、って思ってます。AKB商法がアウトになった時に...

その瞬間全部終わっちゃうってことですよね。

飯田 そうそう。彼が時代を早めたか延ばしたかは分からないですけどね。完全にあれはCD業界を救ってますからね。

水曜日のカンパネラ
水曜日のカンパネラのコムアイさん。ハイレゾx4K映像のデモンストレーションが展示されていました。


「どうやって聴くの?」「データ重くない?」「マニア向けなんじゃないの?」ハイレゾに関する素朴な疑問

ハイレゾ音源を聴いた時に、明らかに音が違うなと言うのは分かりました。これだけ違うのであればOTOTOYが推進していると言うのも理解できたんですけど、一方で、データの容量がものすごく大きくてアルバム1枚数GBもあったり、聴くためにはハードウェアが必要だったり、あと今一般の人が一番音楽と接する機会が多いスマホではハイレゾ音源を聴くことができないって現状からすると、まだハイレゾと言うのがハイエンドな音響マニアの人のためのものなんじゃないかな?と思ってるんですが、その点は飯田さん自身はどのように思っていますか?

飯田 それは半分は正解で、半分は間違いです。実はiPhoneは既に24bit/48KHzまで聴けるって言う事実があったり、ウォークマンがハイレゾに対応してますよね。去年の9月にソニーが「これからはハイレゾだ」ってハイレゾって言葉を作ってウォークマンを出したんですよ。それがきっかけで"ハイレゾって何だ?"ってなって、"実はOTOTOYってサイトではもうやってたみたいだよ"って...で、その24bit/48KHzのデータ容量は1曲40MBぐらいなので、そこまでデータ容量的な負荷はなく聴けるんですよね。それならお客さんはいい音で聴きたいよね、って言うギリギリの需要にはなってる。じゃあそれ以上の音って言うのもあって11.2MHzのDSDの音とかは1曲800MBとかになるんですけど、そうなるとそれはまだハイエンド仕様だし、たぶん何年後かの未来のために今僕らやマニアな皆さんが聴いて"これいいよね"って言うところです。

先ほど話してた録音技術が上がってる一方でCDのフォーマットが古いまま、と言う話なんですが、DVD-audioやSACDやHDCDがうまくいかなかった理由と、今のタイミングで改めてOTOTOYがハイレゾだ、と思っている根拠ってどの辺にあるんでしょう?

飯田 前者のなぜ勝てなかったか?については、インターネットのせいだと思っています。インターネットの登場にCDは負けたんだと思います。海外では、CDの代わりにiTunesの売上を一番気にしてたり、それからSpotifyっていうサービスがヨーロッパを席巻してて...って言うインターネットによる"勝ち"のモデルに、CDという規格のアップデート版が勝てなかったんだと思うんですよね。で、じゃあOTOTOYがなぜもう一度ハイレゾか?って言うと...そこは分からないです。SACDやDVD-audioは少なくとも僕は経験してないし、ハイレゾ配信の業界に飛び込んだ時にみんなmp3や携帯で音楽を聴いてるのが、あまりにもアーティストに失礼じゃないか?みんなもっといい音で毎日必死に練習してるのに、音のフォーマットで下手に聴こえたり、上手く聴こえたりしたら意味無いじゃん、みたいなところが動機なので。

「Manhattan」(Mytek Digital Manhattan DAC/PREAMP)
DSD SHOPの目玉展示。11.2MHzのDSD音源が試聴できた「Manhattan」(Mytek Digital Manhattan DAC/PREAMP)


ハイレゾは「アーティストが聴いてる音」

今、飯田さんが話した作り手の気持ちと言うところも少し気になっていて、例えばテレビが地デジ化やDSD SHOPで展示されてた4Kみたいな高解像度な映像が見られるようになった弊害としてタレントの肌目がキレイに出過ぎるようになってしまった、と言う話もあったりとか。それまでの技術であればごまかせていたかもしれない"何か"が技術が進化したことによって露わになってしまうと言うことが、ハイレゾでも当てはまるのではないかな?と思ったんですが。

飯田 その質問には"あり得ない"と言ってしまった方がいいと思います。さっきまで知人が来客してて「アナログと11.2MHzの音源どっちがいいですか?」って聞いたら「11.2MHzの方がいいです」って断言してました。それは何故かって言うと「アーティストが聴いてる音です」って。僕が今喋ってる声や手拍子を打った時に聴いてる音と言うのが世界最高峰の音なんですよ。それにどれだけ近づけられるかなので、ハイレゾの音質は見えてない物が見える、聴こえてないものが聴こえてくると言う訳ではないんです。ただ一個だけ例外があるのがアナログで、アナログは断トツにハイレゾよりも良くないはずなんですよ。下も出ないし、上も出ないし。でも、アナログ独自の雰囲気と言うか。それも音楽じゃないですか。だからアナログとハイレゾのどっちが音がいいか?って言うとハイレゾの方が音がいいんです。でも、どっちが好きかは人それぞれだと思います。ただ、アーティストが聴いてる音とかミックスルームで鳴ってる音にどれが近いか?ってことに関してはハイレゾに優るものはないと思いますね。

CDはマスタリングによって音質を"落として"リリースするじゃないですか。そういう事を織り込み済みで「この辺は聴いても分からないから」と言うやり方で音源を作っていると、ごまかしがきかないハイレゾの音源は作り手の人たちによりシビアな音作りが迫られるんじゃないかな?と思ったんですが。

飯田 それは、全然違いますね。音が悪いのがごまかされるっていうことは無くて、音が悪かったら意図してないように伝わるっていうだけなので。

なるほど。

飯田 しかもそれなりの実力のある人だったら自分で鳴らしてる音が一番いい音で、その音が録れることが音楽なので、そこの間にごまかしと言うのはほぼないですね。ミックスでハイレゾで作っていたものを今までの小さいお弁当箱(=CD)に落とすより、そのまま同じサイズでマスタリングした方がいい音にはなります。ただ自分で言っててただ自分で言っててアレなんですけど、ロックとかパンクとかに置いては24bit/192KHzは細かすぎるから、24bit/48KHzの方がいいって言う人はいます。つまりアーティストがどう考えるか?ですよね。それでいいと思うんですよ。アーティストが届けたい音だから。

OTOTOY DSD SHOP
OTOTOY DSD SHOP


「おじさんだけの物にはしたくない」ハイレゾを伝える相手は?

OTOTOYでは今ハイレゾのカタログをどんどん増やしているところだと思うんですが、昔の高音質CDはまずはクラシックの音源から始まって...そこで止まってしまったところがあったように思うんですが、OTOTOYがアイドルや大森靖子や水曜日のカンパネラみたいに若いリスナーが多いアーティストのハイレゾ音源をリリースしているのにはすごく意思を感じるんですが。

飯田 「若い子に伝えなくて、何をやっているんですか?音楽業界」って僕は思ってるので、クラシックやジャズに固執してある一定層にだけ伝えることは一番かっこ悪いことだなとは思ってます。"セレクトショップにしたくない"ってよく会社の議論でも出るんですけど、僕は常にそれを言っていて...って言うのは僕は元々京都のTSUTAYA出身なんですよね。TSUTAYAって1998年のCDが一番売れた時にたぶん一番儲けてる会社の一つなんですよ。それはなんでかって言ったら宇多田ヒカルと浜崎あゆみを堂々と売れたんですよ、TSUTAYAって。タワーレコードほど、ブランドにこだわってなかったように感じてました。だから、京都のTSUTAYAでは、浜崎あゆみと宇多田ヒカルが売れてるからこそ、アンダーグラウンドでも好きなことがやれたんですよね。京都で一番テクノに詳しい人とか、一番パンクに詳しい人がTSUTAYAに集まってきて好きなことをやってたんですよ。超雑多な店になってて、それが理想だなって思ったんですよ。 でも、もしクラシックやジャズが好きな人がたまたまOTOTOYに入ってハイレゾを頑張りたいって思ったら死ぬ気で頑張ったらいいんですよ。僕ならオルタナとか、西澤(副編集長)はアイドルも好きなので、好きな物を頑張って必死にやってそのジャンルを発展させたらいい、って言うのを根本で考えてます。バイヤー志向でもあるし、ジャンルを決め込みたくない。それプラス若い子たちにちゃんと伝えたい。自分たちがいいと思ってるものだからおじさんだけの物にはしたくない。それは強い意思としてありますね。

実際にそうやって若い子に向けてって言う曲を出していくと、その子たちからのリアクションも聞きたくなると思うんですが、どんな声がありましたか?

飯田 一番多いのは「分かんない」ですね(笑)

音の違いが、ってことですか?

飯田 いや、音の違いは聴くと分かりますよ。みんな耳がいいので。でも、使い方が分からないとか"物"が好き、とか。

"物"?

飯田 CDですね。その苦境に負けずに頑張っているのが僕らですね。人って基本的に新しいものには否定から入っちゃうじゃないですか。それもすごいカッコ悪いなって思ってて。例えばOTOTOYのインターン生でも「やっぱり私は物が好きです」って言うんです。物が好きなのはいいけど、お前が言うなよ、と。例えばGotch(ASIAN KUNG-FU GENERATION)がアナログを買って欲しいって言ったらアナログを買う、Gotchがハイレゾ買って欲しいって言ったらハイレゾを買ったらいいんですよ。物が好きって言うのは、残響レコードが流行った時に音楽を全然知らない人が"僕、残響系が好きなんです"って言ってるのと一緒で、全然知らないからこそ何かが好きって言っちゃえる。まだまだ何かが好きって言うには君たちの知識は低すぎるよ、ってことをまず言うんですよ。ハイレゾやアナログや色んなものがあるのを聴いて初めて何が好きか分かるし、そう思ってもらえるように伝えてます。まず聴いてみて、その上で自分で選択してみればいいと思うんですよ。聴かないで"ハイレゾとかよく分かんない。ダウンロードとかめんどくさいからCDを買ってるんです。"って言ってたら、それはアメリカには負けますよって言うのは僕の強い気持ちとしてありますね。そう言う育成心でやってます。

そう言う人材の育成も含めてOTOTOYの仕事と言うことですかね?

飯田 その子たちが変わらなければ時代も変わらないじゃないですか。