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西園寺のファジィ論理

ReLIeF(リリーフ)【西園寺のファジィ論理・最終回】『教えたがりな箱と記憶の中の白』

未彩先生が最終回に綴る淡い恋の物語
ReLIeF西園寺未彩の連載小説は今回が最終回。
毎回原稿が届くのが楽しみで仕方なかった連載でしたが、最後はちょっと不思議な恋のお話でした。
読んでいて自然と景色と色が浮かんでくる

こんにちは☆この連載企画でReLIeFや西園寺未彩(@misa_saionji)に、興味を持ってくれると嬉しい♪
みさを好きになってくれると、もっともっと嬉しい♪♪
みさが書いたお話、読んでくだ西園寺\(●>ω<●)/♢キラキラ


 

『教えたがりな箱と記憶の中の白』

欠伸しながら、いつも通り1を押す。5で止まると、扉が開いた。眩しい光に思わず目を閉じた。

--それは眩しいくらいの白だった。暗い紺と深い青の制服はあまり似合わない。マフラーはどうしても明るい色が欲しかった。新品の白が放課後には泥にまみれるなんて誰が想像できただろうか……
やわらかい生地が指の間をスルリと逃げて地面に落ちた。拾い上げようとした瞬間に靴が現れて思わず大声を出す。
「あー!!!」
彼は土で汚れてしまったマフラーを拾い上げてこちらを向いた。
「ごめんね」
申し訳なさが伝わる声がなぜか心臓に響いた。何故か彼に吸い込まれそうになった。マフラーが汚れて悲しいことよりも、彼の目に私が映っていることが嬉しいことが勝っていた。踏まれたマフラーは洗濯すると元通りの白を取り戻した。しかし、私は彼と同じ階で生活している女子にモヤモヤするようになり、この感情はお風呂で洗い流しても落ちそうになかった。
一年生、不可抗力な気持ちを知った。ーー

かわる季節に寄り添うために、洋服をより分けた。捨てに行こうとしている袋の中には、あのマフラーがある。懐かしい記憶に浸りながら“閉”を押す。すぐに4で止まる。扉が開くと、壁に飾られた絵が目に入ってきた。

ーー彼は美術部の部長になった。私もちゃっかり副部長になると、帰り道が一緒になることが増えた。どこにでも転がっているような会話をしているだけなのに、マフラーの編み目に全部押し込んで持って帰りたくなる。編み目の穴に指を突っ込むのが癖になってしまった。
春がちかづいていた。マフラーももうすぐ要らなくなる。お日様が空に居る滞在時間を伸ばして、夕方が真冬より少し長くなってきた頃だった。偶然見かけた彼の隣には、可愛い女の子がいた。
ぼやけたオレンジ色の中、マフラーは涙も包んでくれると知った。ーー

誰も入って来ないことを不思議に思いながら、また“閉”を押す。やっぱり3で止まり、扉が開いた。

ーー例年より寒く、この地方では珍しい雪が何度も降った。毎日塾へ通った甲斐あって、私は彼と同じ学校へ進学することが決まった。彼の隣にいた可愛い女の子はもう居ない。その時間の速さがこわかった。友達という枠の中に居れば、永遠がある。
「おめでとう」
わざわざ合格祝いに私の好きなドーナツを持って伝えに来てくれた彼は、世界の余分なものを全部消し去った後のような存在で、公園を全部白で被おうとする雪の中がよく似合っていた。
「好き」
ホイップクリームが詰まった穴のないドーナツが壁になって、呟きは彼まで届かなかった。
安堵と落胆の一瞬の後、平和で幸せなこの時間に腰掛けた私は、紅い顔と重い言葉を白で誤魔化した。ーー

教えたがりな箱のことがだんだんわかってきた。“閉”を押す。もちろん2で止まる。扉が開くと同時に冷え込んだ風が吹き込んでくる。

ーーぶつかってくるような風を感じながら歩いていた。髪型が崩れないか心配で仕方ない。彼に可愛いと思われたら、それだけでいい。他の人の評価なんてどうでもいい。
2月の今日はチョコレートが特別な意味を持つ。散々悩んでチョコレートケーキを焼いた。会わない言い訳を片っ端から無くして、会う理由を一生懸命考えた。勉強よりも頭を使ったせいで、私が糖分を欲しくなった。味見すると勇気が湧いた。
「ありがとう」
受け取ってくれた。彼の笑顔を受けた私は、地面よりほんの少し浮いているような錯覚を起こした。帰り道、マフラーの中で一人作戦会議をした。来年は……
“もっと”が押し寄せてくる。ーー

“閉”を押す。やっと1で止まり、私は扉の外へ出た。

汚れてしまうリスクがあっても、それを吹き飛ばすくらいの白だった。とれない汚れや戻らない穴は、流れた時間を感じる。どこかの星の表面のような毛羽立ちを触ると、私の中にある複雑な気持ちによく似たざらつきを感じた。守ってくれて、あたためてくれて、共有してくれて、ありがとう。だけど、やっぱり……さようなら。次の冬には記憶の中の白だけ持って行きたい。明日は赤いマフラーを巻いていく。マフラーのせいにして、堂々と赤面しよう。

あなたが好きだと伝えたいから。

 

🌟あとがき🌟

エレベーターとエスカレーターってどっちがどっちか曖昧だと思います。「箱のほう」「動く階段」わからなくなったら、この表現をおすすめします。

恋愛が書きたくて書いた☆
一個前のお話は愛で、こっちが恋だから、これで恋愛になった!\(●>ω<●)/わーい♪


 

リンク
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西園寺未彩 twitter twitter.com/misa_saionji

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