2017年9月2日に東京EX THEATER ROPPONGIで新山詩織PREMIUM弾き語りライブ「しおりだけ〜ひとり唄〜」が開催された。ファンからの要望も多い本人の弾き語りワンマンライブだ。
実はワンマンライブでのオール弾き語りは、今回が初。そして東京公演のみというまさにプレミアムな一夜となったこのライブのコンセプトは「秋の夜」。
今までデビュー以来リリースしてきたシングル、アルバム収録曲の中から、コンセプトに合わせながら、弾き語りだからこそ伝わる、伝えたいという楽曲を本人がセレクトして構成された。
秋の夜を感じる虫の音が聴こえるSEの中、タイトルを告げる新山自身の声とともにステージに登場したのはアコースティックギターを抱えた新山詩織。１曲目は1stアルバムからの楽曲「たんぽぽ」でスタート。アコースティックギター１本だけだからこそ伝わる彼女の切なくも力強い声が会場に一気に響き渡る。歌声とともに白いワンピースの裾が揺れ、弾き語りならではの息遣いが目にも見えるようだ。２曲目の「シャボン玉みたいに」が終わると、「ようこそ、新山詩織PREMIUM弾き語りライブへ。今日はひとりだけのライブということでいつもと違う心地よさを感じています。皆さんも友達の部屋で聴いているような感じで聴いてください。」と本人がファンへと言葉を贈る。そして「つながりを大事にしたい」というメッセージに続き演奏されたのは、昨年リリースのアルバム収録曲でもある名曲「糸」のカバー。美しいメロディーと詞を繊細に紡いでいく彼女のヴォーカルの存在感が、カバーだからこそより際立って感じられる。会場全体がじんわりと温かい空気感に包まれる中、次いで披露されたのは、昨年本人が出演したフジテレビ系月９ドラマ「ラヴソング」の劇中歌「恋の中」（作詞作曲：福山雅治）。初めての経験となったドラマ出演を通して広がった表現力をいかんなく聴かせてくれた。
今回のステージは“灯り”と“光”でも「秋の夜」を演出。曲ごとに、秋の夜長を過ごす部屋の灯りや秋の清かな月明かり、そして星空のイメージが照明によって表現され、ライブ空間を鮮やかに彩っていた。
ライブも中盤になると、初めての挑戦として鍵盤での弾き語りも初披露。「緊張する」と言いながら、やわらかな鍵盤の音色とともに「Hello」を歌い、アコースティックギターとはまた違ったひとりだけの弾き語りの魅力を提示した。歌の途中で会場のファンを促して一緒に歌う場面もライブならでは。
曲が終わるとステージにはスクリーンが登場。
「普段言えない言葉がある」という新山の語りから流れた映像は、事前にオフィシャルサイトで募集していたファンのみんなが普段なかなか伝えられない大切な人への手紙や言葉。そのメッセージを彼女の作詞作曲の楽曲「名前のない手紙」のBGMと共に映し出される。映像が終わると、黒のシンプルなワンピースに身を包んだ新山が登場。演奏するのは先ほどメッセージとともに流れていた「名前のない手紙」。彼女がファンのみんなへ向けて書いた曲だ。その思いは会場のファンの胸にストレートに伝わっていた。
そこからカバーコーナーの「マゼンタ」（ハルカトミユキ）、「深夜高速」（フラワーカンパニーズ）を２曲演奏。歌う前にはその曲たちとの出会いを語り、「胸がぐつぐつ煮え立つような気持ちになる。静かに爆発するような感じが好き」という言葉を残した新山詩織。出逢った当時の思いを吐露するかのように静かに、しかし力強い歌声とギターの音色が響くカバーも秀逸だ。
ライブ終盤はシングル曲を中心に、「絶対」、「だからさ」、「ゆれるユレル」でライブ本編を締めくくった。
アンコールの声を受け、スクリーンには９月６日にリリースされる新曲「さよなら私の恋心」のミュージックビデオが流れると、再び新山詩織がステージに登場。
「ここでシークレットゲストをご紹介します。今回のミュージックビデオの監督を務めていただきました岩井俊二監督です。」の声ともに登場したのは、岩井俊二氏。新山にとっては初めての体験となったというワンカット撮影によるミュージックビデオ撮影時のエピソード等を語った後、なんと岩井氏と共にセッションライブを実施。ヴォーカルとアコースティックギターで新山詩織、岩井俊二はアコースティックギターを演奏して披露されたのはもちろん「さよなら私の恋心」。
新曲「さよなら私の恋心」はサウンドプロデューサー＆楽曲提供にCharaを迎えた意欲作。新山本人がCharaとの出会いが映画「スワロウテイル」（監督：岩井俊二、1996年公開）だったことから、Charaとの楽曲が出来上がった後にミュージックビデオの制作を岩井氏に相談したところ快諾を得て作り上げられた。まさに奇跡的なコラボレーションによって生まれた楽曲、ミュージックビデオだ。
そのミュージックビデオ撮影の現場で今回のワンマンライブの話が出た際に、新山から岩井氏にオファーをしたことで始まったという今回の共演。まさにPREMIUMライブに相応しいメモリアルで豪華なゲストとのステージに、客席からは大きな拍手が贈られた。
再びステージは新山詩織ひとりだけの空間となり、シングル「さよなら私の恋心」のカップリンングに収録される新曲「らくがきちょう」がライブ初披露された。疾走感あるナンバーで、客席も熱もさらに上がる。
続けて、歌うということ、今自分が在りたい姿について、言葉を選びながら真摯に語り、新山がファンやスタッフへの感謝を伝えて、初の弾き語りワンマンライブの最後の曲に選んだのは2ndアルバムに収録したバラードナンバー「きらきら」。満点の星空をイメージした照明が輝く中、彼女の歌声がいっそうストレートに伝わってきた。
アンコールの最後には2018年2月に開催される東京、大阪、名古屋のライブツアーも発表。「また逢いましょう」という言葉とともに、ライブはフィナーレを迎えた。
9月6日の新曲リリース、来年のツアー発表など変わらず突き進んでいく彼女の今後が楽しみでならない。