そして本編のクライマックスは「サラバかな」〜「ALL YOU NEED IS LOVE」。MCなしのノンストップでのライブは本ツアーと同じ構成だが、これまでの会場とはケタ違いの広さもつステージをフルに使っていたBiSH。最後は明らかに疲労した様子が見られ、変色するほどに汗が滲んだ衣装からもライブの激しさが伺えた。リンリンとモモコグミカンパニーにいたっては2人は立っているのも辛そうな状態だったが、むしろそこから後の2人がなんとかライブをやり切ろうとする気迫がこもった様子や表情は、これまでのライブであまり見たことがなかっただけに非常に印象的だった。
ライブ本編を終え、アンコールを待つファンの前にポップアップで登場してきたのは再びのマネージャー渡辺氏。「大事なお知らせ」の前フリから映像越しに伝えられたのはBiSHの3rdツアー「Less than SEX TOUR」開催のお知らせ。過去2回のツアーをはるかに上回る全国22ヶ所23公演を回り、2016年10月8日のファイナルは「BiSH Less than SEX TOUR FINAL’帝王切開’」と題した日比谷野外音楽堂でのワンマンライブ。”日比谷野外音楽堂”の文字が映し出された瞬間の歓声はこの日一番、いやBiSHのライブ史上最大のボリュームだったかもしれない。
3rdツアーの開催、そして日比谷野音ワンマンというネクストステップへ進むのに十分すぎる告知の後、発表したばかりの新衣装でステージに戻ってきたBiSHは「日本全国を回って一回り二回り三回り…いっぱい成長したBiSHで日比谷野外音楽堂に帰ってきたいと思います!」(ハグ・ミィ)と意気込みを語り、メジャーデビュー曲「DEADMAN」も初披露した。シャウトでまくしたてる前半パートにメロディックなサビが追い打ちをかける「DEADMAN」は、メジャーデビューするBiSHの新境地を開く一曲になるのは間違いなさそうだ。
その「DEADMAN」のお披露目を終えると、「まだやってない曲ありますよね?ね?ね?」とモモコグミカンパニーが煽りを入れ、「いくぞ!!BiSH 星が瞬く夜にーっ!!!」のセントチヒロ・チッチのシャウトからの「BiSH-星が瞬く夜に-」を6連発。
本編22曲をノンストップで終えた後の「BiSH-星が瞬く夜に-」6連発はステージ&客席ともどもサバイバルな消耗戦へと突入。
「死ぬ気でかかってこいよー!」と煽るセントチヒロ・チッチ。「死ね!死ね!死ねーーーー!!」「渡辺!渡辺!」とシャウトするリンリン。「いくぞー!」の掛け声とともにダイブするアイナ・ジ・エンド。モモコグミカンパニーは歌っているのか叫んでいるのか分からない状態。ツアーでも見せたサビのパートを大きく入れ替えたバージョンもあれば、ハシヤスメ・アツコは果敢に別のメンバーのソロパートにからんでいったり、ハグ・ミィは「歌えーー!」とフロアへマイクを差し出す。
そして遂に迎えたラスト6回目の「BiSH-星が瞬く夜に-」のイントロで会場に大量の銀テープが打ち出される。フロアもステージも見えなくなるぐらいのテープが舞う中でセントチヒロ・チッチが放った「これがラストだよー!」の声に、会場全体が少しだけ安堵した空気が流れたような気がしたが、最後の体力を振り絞った「BiSH-星が瞬く夜に-」を終え、ライブはフィナーレとなった。
BiSHにとって過去最大規模の会場となった品川ステラボールは、大掛かりなセットをはじめとするポップアップや銀テープの派手な仕掛け。天井近くまで幾重にも積まれた多数の照明。ニコ生配信用に用意されたハンディ、ドリー(撮影用の台車)、そしてクレーンを使った各種カメラ。
そして広い会場の隅々に行き渡る爆音のBiSHサウンドと東京でのファイナル公演をを待ちわびていたファンの期待と熱量、そして何よりBiSHのパフォーマンスがmixした全てが品川ステラボールのワンマンを演出したと言ってもいいだろう。
メジャーデビューを目の前にしているとは言え、現時点だはまだインディーズで、かつ活動開始から一年も満たないグループのワンマンがこの規模と内容で開催される例はほとんどないだろう。
それはBiSHがこの先に控えたメジャーデビュー、そして秋に待っている日比谷野音ワンマンを期待させるのに十分だっただけでなく、”武道館のその先へ”向かおうとする第一歩という印象も強く感じさせたワンマンライブだった。