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特集

DJ後藤まりこ インタビュー

パンクバンド・ミドリのボーカルとして異質かつ圧倒的な存在感を放っていた後藤まりこが、DJ後藤まりことして2019年12月11日(水)にアルバム 「ゲンズブールに愛されて」をリリースした。2015年5月に突然の音楽活動休止を宣言してからは、表立った活動がなかった後藤にとって、本作は約5年ぶりとなるソロ名義でのリリースとなる。
そのアルバムのリリースあたって、musiciteでは後藤まりこへのインタビューをオファー。そのきっかけとなったのは、2019年5月6日の「ギュウ農フェス春のSP」とその中で開催された「ジャイアントキリングステージ」への後藤の出演だった。
それまでもアイドルとの関わりはあったものの、後藤は何故アイドルイベントであるギュウ農フェス、そしてジャイアントキリングステージに出演しようと思ったのか?
本インタビューでは、ギュウ農フェスへの出演をはじめ、アイドルをテーマとして後藤に様々な話題について語ってもらったが、その話から後藤まりこのパーソナリティや強い信念を伺うことができた。(Photo by 朝岡英輔)

DJ後藤まりこ、ギュウ農フェス ジャイアントキリング ステージに参戦

――後藤さんは、そもそもなんでギュウ農フェスに出ようと思ったんですか?

後藤まりこ(以下、後藤)単純におもろいかなと思ったんですよ。ギュウゾウさん(ギュウ農フェス主宰・電撃ネットワーク)って元々パンクというか、無茶苦茶な人じゃないですか。やったら僕も大丈夫じゃない?って思って、ギュウゾウさんにDM送ったら出させてくれるって。

――ギュウ農フェス春のSPへの出演はともかく、ジャイアントキリングステージにも出ようと思ったのは?

後藤やるならいっぱいやった方がおもろいかなって。またお前おんのか!?どこにでもおるな、みたいな。

――ジャイアントキリングステージは、僕も運営に携わっていたので後藤さんのエントリーはかなり驚いたんですが、出演してみてどうでしたか?

後藤アピールタイムで、ギュウゾウさんに「ギター弾いていい?」って聞いたら、「好きにやってくれ」って言われたから外に弾きにいって。あの日は僕、テントのステージとジャイアントキリングと外で弾き語りもしたからすごく楽しかったですね。

DJ後藤まりこ(ギュウ農フェス春のSP2019 ジャイアントキリングステージ)

DJ後藤まりこ(ギュウ農フェス春のSP2019 ジャイアントキリングステージ)

ギュウ農フェスへの出演を「楽しかった」と振り返った後藤だったが、ライブでの鬼気迫る後藤の姿は、ミドリ時代の後藤まりこを彷彿とさせるものだった。「背筋が寒くなるくらいの迫力でした」と率直な感想を伝えると、

後藤ぶっちゃけライブって非日常やないですか。毎日満員電車で通勤してて誰かから押されたり、ギュウギュウやったらムカついたりイライラする。でも、ライブハウスで押されたりしてもみんな怒らへんし、オッケーオッケーって言うやん。モッシュとかダイブとかあっても許すし、演者がダイブしても受け止めてくれる。無茶苦茶になる非日常を味わう。僕はそれを求めてるんですよね。でも、それは僕だけやったら成り立たないんですよ。僕は誰かに対して発信してるわけやから、それを受け止めてくれる人がいないとあかんから。それで受け止めてもらえたのをまた返してっていうキャッチボールをみんなとしたいし、言葉にするのは恥ずかしいけど愛し合いたいし、許し合いたい。ただそれだけなんですよ。

後藤が語る言葉はシンプルだが、実際に後藤がライブで体現する”非日常”は、想像を遥かに超えてスリリングなものだ。

後藤でも、ライブってやっぱりドキドキしたいやないですか。そのドキドキなんですよね。僕が求めてるのは。

「ドキドキしたいやないですか」…あの凄まじいライブをドキドキの一言で言い切ってしまう後藤の言葉がとても印象的だった。

 

後藤まりことアイドルの関係。後藤まりこのアイドル性。

ギュウ農フェスへ出演する以前から楽曲提供などでアイドルとの関わりも多かった後藤まりこ。後藤とアイドルの関係について掘り下げる前に、後藤自身にとってアイドルと呼べる人がいたのかを尋ねてみた。

後藤光GENJIです。かーくん(諸星和己)。絶対的存在やないですか、その頃の光GENJIって。で、その次がやまだかつてないWink。その後にあぶらだこが好きになったんですよね。僕のアイドルはその三組。けど、かーくんにもやまだかつてないWinkにもあぶらだこにも会いたくないんですよ。アイドルは偶像で虚像やから。あぶらだことか特にそうなんですよね。ぶっちゃけ好きな人が喋ってるところ見たくないですよ。楽屋とかでも会いたくない。だってダサかったら嫌やないですか。「おはようございます」って言っても返してくれへんかったらちょっと嫌やし。

――でも、後藤さん自身がアイドルの運営さんから声をかけられることもありますよね。それについてはどう思ってるんですか?

後藤めちゃくちゃありがたいですよ。むしろ僕運営さんの方が年齢近いし。その辺大丈夫なんやって分かったから、じゃあ平均年齢爆上げしていきましょか?っていう感じで。

――そういえばこの間、ゆるめるモ!の一日限定でメンバーになるってニュースが発表されましたよね。あれは田家さん(ゆるめるモ!プロデューサー)に言われたんですか?

後藤そう。田家さんに「やりません?」って言われて、やるよっていう。僕はゆるめるモ!が好きなんですよ。

――どんなところが好きなんですか?

後藤出会ったのがいつかは忘れちゃったんですけど、ゆるめるモ!の曲を作ってるハシダくん(箱庭の室内楽・ハシダカズマ氏)とかと練習してたスタジオでワークショップをしたんですよ。まだゆるめるモ!が6人の時かな。

――相当最初の頃ですね。

後藤その時に、僕が田家さんにゆるめるモ!を作った時の話とかをいろいろ聞いたら、田家さんが「生涯、ゆるめるモ!しかやらない」みたいなことを言ったんですよ。その時に、この人は信用できると思って。ぶっちゃけアイドルの運営ってクソやと思ってるんですよ。そうじゃない人もいると思うんですけど、基本信用でけへんって。でも、”この人は信用できるな”って思ったし、なんか一生懸命だったんですよね。それがよかった。気持ちがあったから。

――なるほど。でも、そうやってアイドル運営さんから声がかかるのって、その人たちにとっても後藤さんがアイドルだからなんじゃないかと思うんですよ。実際、僕にとっても後藤さんはアイドルだったりしますし。

後藤うそぉ!?それは分からないですね。自分では。

――ものすごく遠いんだけど、とてつもなく光り輝いている存在というか。後藤さんにとっての光GENJIみたいな。

後藤なるほど。じゃあ人によって僕はそういう存在になれてるってことですか?

――全然なってると思います。

後藤それはめっちゃ嬉しいっすね。でも、最近思たんですけど、スギムさん(クリトリック・リス)も誰かに誰かにとってのアイドルなんですよね。

――そうです。まさにそういうことです。スギムさんのファンはおじさんばっかりですけど、アイドルだと思います。

後藤でも、スギムさんはすごいと思うんですよ。

――後藤さんもスギムさんも出身は大阪ですけど、一緒にライブすることは多かったんですか?

後藤いや、大阪にganjaってバーがあるんですよ。僕もそこで一瞬働いてて。スギムさんがよう飲みにきとって。その頃スギムさんはクリトリック・リスかバンドを結成したぐらいでメンバーがおったらしいんですけど、いざライブになったら誰もけえへんかったらしくて。で、一人になってタンスから嫁のパンツを盗んできてライブをしたりしてて。それを僕は”おもろいな”って思って、節目々々でスギムさんを呼んでるんです。ミドリがメジャーデビューした時のNU茶屋町(タワーレコード梅田NU茶屋町店)のインストアにも呼んだし、その時のスギムさんは大層尖ってて、全裸でNU茶屋町のエスカレーターを降りていったんですよ。

――それ絶対やっちゃダメなやつですよね?

後藤全然ダメですね。なんでそんなんすんのやろ!?と思った。スギムさんのそういうところがあるのが好きなんですよ。

アイドルの話題からクリトリック・リスとの出会いまで、様々なエピソードが語られたが、後藤とアイドルと関わるようになった時期は、実は後藤が音楽活動を控えていた期間と重なっている。
後藤本人にとっても順調ではない時期だったとは思うが、当時のことについて聞いてみたい質問があったのでそれを尋ねてみた。

――ある時ふと思ったことなんですけど、後藤さんって常に戦う相手を求めてる人なんじゃないかな?って。

後藤えー。ケンカしたくないっすよ。

――前に音楽活動を辞めるって言った頃は、後藤さんの周りから戦う相手がいなくなっていった時期だったじゃないかな?って。

後藤どうなんですかね。僕がバンドをやってたのと同じ世代って言うと、9mm(9mm Parabellum Bullet)とか、凛として時雨とか、あとドレスコーズとか。みんなまだ第一線で頑張ってくれてるのがすごくありがたいんで、だから戦う相手というか…いや、仲良くしたいんですよ。みんなが。ケンカもしたくないし、戦うなら自分と戦いたい。他人は責めたくないし、受け入れたいっす。

――でも、吉田豪さんとのShowroomではムカつくムカつくって…

後藤そうなんですよ。

――(笑)

後藤これでええんやろ?みたいな定型文が僕は嫌いなんですよ。

――今日のライブ(下北沢にて)のMCで言ってたこともそれですか?

後藤そうすね。例えば銀杏BOYZはいいんすよ。それが好きなのも。でも、そのフォロアーみたいのはどうかと思うんですよ。好きなのは分かるけど、それを真似してどうなんの?って。援助交際しても何しても生きとったらええって。これどっかで聴いたな?みたいな。そんなんやったらコピーバンドを学祭でしとけやって思うんですよ。

――それでいうと、ミドリのフォロアー的なバンドはいなかったかもしれないですね。

後藤僕は知らないっすね。

――そういう人たちはむしろアイドルの方に多かった気がするんですが。

後藤えぇー?でも、アイドルの子で「好きでした」って言ってくれる人が多いんすよ。柳沢あやのちゃん(元BELLRING少女ハート/現グーグールル)とか、始発待ちアンダーグラウンドのウイちゃん(オクヤマ・ウイ)とか、キスエクのるりちゃん(浅水るり)とか、SUMMER ROCKETの紬木むぎちゃんとかも僕のこと好きって言ってくれる。

――あと、おやすみホログラムとかも後藤さんのことは絶対見てると思うんですよね。

後藤カナミルが高校生の頃にシェルターにライブ見に来てたって。めっちゃ嬉しかった。

――なので後藤さんのフォロアーは、バンドよりもアイドルの方が多かった気がするんですけど、結局誰も後藤さんにはなれなかったな、って。

後藤あ、ならんでいいんですよ。その人はその人やから。僕になる必要はない。

――ちなみに後藤さんから今のアイドルに伝えたいことはありますか?

後藤あります!ぶっちゃけ僕、36なんすよ。だから僕の子供でもおかしくない子が今アイドルしてるんですよ。アイドルの高年齢化って言われるけど、僕がおるからみんな安心してって言いたい。僕がたぶん一番上やから大丈夫。みんな僕よりは年下だから。

――ということは、やっぱり後藤さんはアイドルなんですか?

後藤…の可能性もある(笑)その可能性もあるけど、僕はやっぱりパンクの人なんですね。

――でも、パンクって言葉の意味が広いですよね。それこそギュウゾウさんもパンクの人だと思うし。

後藤ホンマ、パンクって言葉広いすもんね。ただ、一括りにされたくないんすよ。アイドルもそうだと思うんすよね。地下アイドルとかって言葉に一括りにされたくないんすよ。twitterとかInstagramをみんなやってるやないですか。それってみんなに認めて欲しいんですよ。自分のことを。自分は自分。誰かと似てるっていうのは嫌なんですよ。それはアイドルじゃなくても当たり前なんですよ。それをボンクラなお客さんとかは分かってないんですよ。誰かと誰かが似てるって言ったらムカつく。なんなんやろ?自分の知ってる言葉を当てはめて安心すんな、って思うんですよね。

――そういう人たちに対してはどうすればいいんですかね。

後藤殴ればいいんじゃないすか?

――(笑)

後藤メンヘラとかいう言葉で簡単に終わらせんのはどうかと思いますね。だから何?メンヘラやったら何?って。

――でも、後藤さんもメンヘラって言われたことありますよね?

後藤あるある。あるけど僕の知ってるメンヘラと、あなたの知ってるメンヘラは違うし、そんなおっきい一括りに僕はされたくないし、マジでそういう人は知らないっすね。ムカつく。そのムカつくが原動力になってるんですけどね。

――それがさっき言った「後藤さんは常に誰かと戦ってる」って話なんですよ。

後藤あーそうかも!なるほど。ということは、僕は客とも戦ってるんですね。

 

5年間止まっていた時が動き出しても「僕は僕」。誰にも閉じ込められないDJ後藤まりこの「ゲンズブールに愛されて」

今回のインタビューでは、後藤とアイドルとの関係について話してもらったが、後藤の話の中で終始一貫していたのは、僕は僕、その人はその人、という言葉だった。一見するとそれは冷たい態度にも感じられるが、後藤が訴えていたのは自分や他者に対する徹底的な”個人を尊重する姿勢”のように思えた。

このインタビューを収録した当日、後藤はイベント「下北沢にて」に出演していた。そのライブのMCで、後藤はアルバムのリリースに至るまでの時間を「時が止まっていた5年間」と語った。その言葉の真意について、後藤はあるファンとの胸が詰まるようなエピソードを話してくれたが、その中にも後藤の僕は僕という姿勢は貫かれていた。そしてそれはアルバムのタイトル「ゲンズブールに愛されて」にもつながるものでもあった。

後藤”時が止まってた5年間”っていうのは、今タピオカ屋の店長をしてる◯◯ちゃんっていうファンの子の話なんです。その子は高校生の時から僕のバンドもソロも見に来てくれてたんやけど、僕はソロを辞めた後に入院をしたんですよ。その頃のことを僕が「時が止まってた」って言ったら、その子も「私の時も止まってた」って言ってて。で、僕がその後に動き出したら、「私の時もようやく動き出しました」って。それを聞いたらもうなんかファンとか垣根なしに大好きって思った。そういう人がいてくれることがホンマに嬉しかったけど、でもそういう人らに「愛してる」って言われても僕は「ゴメン」って…

――え?ゴメンってどういうことですか??

後藤僕は僕のやることをやるんですよ。

――せっかく5年間も待っててくれた人がいたのに?

後藤ありがとう!でも、僕は僕やから。僕の嫌いなことって、誰かを閉じ込めて殺してしまうことなんですよ。恋人や彼氏彼女でも閉じ込めようと思えばできるやないですか。僕にも好きな人はいました。でも、その人のことを閉じ込めたくないし、僕も閉じ込められたくない。今日のMCで「ジェーン・バーキンにも、シド・アンド・ナンシーにもなられへん」って言ったのはそういうことなんです。誰に愛されたとしても僕は僕。だからアルバムも「ゲンズブールに愛されて」なんですよ。

 


ゲンズブールに愛されて
2019年12月11日(水)リリース
ニクシズム/NIX-001/定価 2,273円(税込 2,500円)
▼ 収録曲
1.Loved by Gainsbourg.
2.真冬の甲子園
3.ONIGOROSHI
4.replay ATAMI
5.HEAVEN
6.四畳半箪笥ダンス
7.Breeeeeak out!!!!!
8.畳 so good!!!!!
9.LSD
10.ねばーえんでぃんぐすとーり
11.おばけ

Je t’aime, mon amour Tour 2020
2020/1/24(金) 熊本県・ 熊本NAVARO
【ゲスト】lilaill/ケイタミン and more…
open and start 21:00
adv. ¥2,000/door ¥2,500(+1D別)

2020/1/25(土) 大分県・ 大分AT HALL
【ゲスト】ASTRO/Dave Skipper/Leecher/P.O.V./Sea becomes black and more…
open 17:30/start 17:30
adv. ¥2,500/door 未定(+1D)

2020/1/26(日) 福岡県・ 福岡UTERO
【ゲスト】PANICSMILE/Bellbottom From 80’s/the camps
open 18:30/start 19:00
adv. ¥2,500/door ¥3,000(+1D)

2020/2/9(日) 大阪府・ 梅田シャングリラ ※ワンマン
open 17:45/start 18:30
adv. ¥3,300/door 未定(+1D別)

2020/2/11(火祝) 愛知県・ 名古屋ハックフィン ※ワンマン公演
open 18:00/start 18:30
adv. ¥3,300/door 未定(+1D別)

2020/2/16(日) 北海道・ 札幌スピリチュアルラウンジ
open 18:00/start 18:30
adv. ¥3,300/door 未定(+1D別)

2020/2/29(土) 東京都・ 渋谷WWW ※ワンマン公演
open 17:00/start 18:00
adv. ¥3,300/door 未定(+1D別)

2020/3/8(日) 沖縄  Output
【ゲスト】ワンチャイコネクション/HARAHELLS
open 17:00/start 17:30
adv. ¥2,800/door ¥3,000(+1D別)

リンク
後藤まりこ オフィシャルサイト http://510mariko.com/
後藤ま◯こ twitter https://twitter.com/510yavai

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