人気度の分布が気になったから調べてみた。
毎日550組以上のアイドルを対象に集計&発表している「イマキテランキング」ですが、そのランキング集計に使っているデータの一つに「人気度」という指標があります。これはSpotifyが全アーティストの評価を0〜100までの数値で割り振ったものです。
イマキテランキングは、データそのものの値よりも変化量に着目したランキングなので、どのアイドルがどれくらいの人気度か?についてはあまり注目していなかったのですが、イマキテランキングの対象になっているアイドルの人気度がどのように分布しているかを調べたら、アイドルシーンの全体像が分かるような気がしたので実際に調べてみました。
上のグラフは、人気度ごとにどれくらいのアイドルが分布しているかを示した図です。
トップ層──雲の上に浮かぶ、ごく少数の天上人(赤のグラフ)
まず注目したいのが、突出したごくわずかなトップ層です。
人気度40以上は全体の約3.7%(20組)にとどまっていますが、人気度の総合計(6,445)のうち約16%(1,019)を占めています。これは一握りの僅かなグループに人気が集中している状態で、グラフ上でも孤高のポジションを築いています。
まさに「雲の上の存在」たる彼女たちは、シーンの代表として世間に広く知られ、マスメディアでの活躍やアリーナ〜ドーム級の大型公演を実施できる強烈な存在感を示しています。
一方で、あまりに少数であるがゆえに、同じアイドルシーンにいながらも「別世界の住人」のように映る距離の遠さも感じられます。
裾野層──圧倒的な数を誇る0〜10帯(水色のグラフ)
次に見えてくるのは、人気度0〜10(全体の約57.5%)に密集する圧倒的多数のアイドルたちです。このグラフを山に例えると広大な原野が裾野となって広がっている状態です。
ここには結成したばかりの新人やセルフプロデュース系の地下アイドルといった、まだ認知を獲得していない存在がひしめいています。また流動性が高く入れ替わりも激しい一方で、事実上の活動休止状態にあるグループも含まれる混沌とした世界となっています。
中堅層──中核だけど脆弱な、シーンのエアポケット
そして両者の間に挟まれるように存在しているのが、人気度15〜30の中堅層(全体の約25%)です。
データ上では中堅層は確かな厚みを持ち、シーンを支える“量的な中心”とも言える存在ですが、トップ層と裾野層の間に入ると「勢いのエアポケット」のように映っています。
現実のアイドルシーンを見ていても各階層の断絶、特に中堅層とトップ層の間には越えられない大きな壁を感じるので、中堅層はある種の”歪み”を抱えた層といえると思います。
中堅層が抱える“歪み”の正体
では、この「歪み」とは具体的に何を指すのでしょうか。
第一に挙げられるのは”動員の壁”です。中堅層はZeppクラスの会場を満員にできる力を持っていますが、その先のアリーナやスタジアムに進むには決定的な突破力を欠いています。特にライブシーンでは「1,000人の壁」「2,000人の壁」とよく言われ、多くのグループがこのラインで頭打ちとなっています。
第二に”メディア露出の壁”があります。音楽メディアやSNSでは大きな注目を集められる一方で、地上波テレビや大衆紙などのマスメディアに進出する機会は極めて限定的です。そのため世間一般への浸透が遅れ、ファン層の拡張が難しくなっています。これはトップ層と中堅層を隔てる大きな違いの一つで、トップ層が国民的な知名度を得ているのに対し、中堅層は「知る人ぞ知る」の最大限のラインでとどまりやすいのです。
さらに”経済的な壁”も無視できません。スポンサーや大手事務所との強固な関係を築けるトップ層に比べ、中堅層は資金やリソースに限界があり、次のステージへの投資を思うように進められない現実があります。
こうした現実が”壁”となって中堅層の前に立ちはだかり、グラフ上にも”歪み”として表れているといえます。
中堅層の理想像──橋渡しと競争の中心地
本来、中堅層は裾野とトップをつなぐ橋渡し役であり、同時にシーン全体を牽引する競争の中心地として機能するのが理想です。
さらに理想的といえる中堅層は、常態的な”群雄割拠”にあることです。挑戦的で意欲に溢れたグループが並び立ち、それぞれが切磋琢磨しながら競い合う。そこには「次に誰が抜け出すのか?」という競争のドラマがあり、ファンや業界にとっても常に目が離せないシーンを作ることができます。
そこからトップ層へ上がっていく例が増えていけば、中堅層は、裾野層には希望、トップ層には緊張感を与えうる理想的な存在となることができます。
中堅層をこうした流動的でダイナミズムがある層にすることができれば、アイドルシーンは一体感のある活性化が続き、裾野からトップに至るまでの流れがより滑らかに機能していくはずです。
中堅層の理想と現実の落差──なぜ歪みは生まれ、是正されなかったのか
では、この「理想的な中堅層」はどうすれば実現できるのでしょうか。
中堅層のアイドルたちがその核となるのは間違いありませんが、彼女たちが“シーン活性化の犠牲”となるべきではありません。彼女たちの使命は自らの成長であり、ファンと共に夢を追いかけ実現していくことです。
しかも、現在の中堅層が抱える“歪み”は、長い時間をかけてできた自然の結果であり、何もしなければこのまま変わることはないでしょう。むしろ歪みは固定化し、裾野とトップの断絶をより深めてしまう可能性さえあります。
では、この歪みを是正する役割は、誰が担うべきでしょうか。おそらくそれはアイドル本人よりも、第三者的な存在の方が適任なのではないでしょうか。
求められる第三者の視点とメディアの役割
アイドルシーンを取り巻く第三者的な存在。それはおそらくメディアです。
もちろん、イベンターやインフルエンサーなども非常に重要な役割を担っていますが、客観的な立ち位置でシーンの現状を可視化、言語化するのはメディアが一番得意とするところですし、なによりアイドルたちの活動や活躍は、自分たち発信で語るよりも第三者視点で語り直した方が説得力を持ちます。
中堅層を盛り上げ、裾野層とトップ層の分断をつなぎ直す”媒介者(=メディア)”としての役割は、アイドルシーンにおいて今後ますます重要になっていくはずです。
イマキテランキングから見えたアイドルシーンの課題
トップ層は圧倒的な存在感でシーンを象徴し、裾野層はその数と可能性でシーンの礎となっている一方で、活性化の鍵を握る中堅層は壁と歪みを抱えて行き詰まっている。
イマキテランキングのデータから浮かび上がってきたアイドルシーンの全体像はこのようなものでした。
そこから生まれた「理想的な中堅層の構築」がアイドルシーンの課題と結論付けたのが、今回の調査結果です。
メディアの重要性について書いたのは、多少の私見も含みますが、少なくともイマキテランキングのデータは“媒介者の不足”を示唆していることに気づけたのは収穫でした。
今注目すべき中堅層は誰か?
現場ではどんな群雄が割拠しているのか?
musiciteは、その最前線をイマキテランキングと現場取材で追いかけていきます。
