「ギャルに聴いて欲しい」「EDMは好きじゃない」。2014年4月2日に配信限定でリリースされるAZUMA HITOMIの「食わずぎらい」は強烈なダンストラックと赤裸々で戦慄のラップが織りなすエモーショナルでありながら「萌え」すら感じさせる稀有なタイトルとなった。矢野顕子のアルバム「飛ばしていくよ」の表題曲にトラックメーカーとして抜擢され、テレビ番組で初めてその素顔を明らかにしたAZUMA HITOMIへのインタビュー。プロデューサー小林氏を交えたトークでは彼女の意外な音楽性や信念が次々に明らかになった。さらにテレビ以外では初となるスナップ写真も公開。文字通りAZUMA HITOMIの素顔に迫った特集です。(photo by 山田秀樹)
AZUMA HITOMIにとっての矢野顕子とは。アルバム「飛ばしていくよ」参加エピソード
初めに矢野顕子さんのアルバムに楽曲提供することになった経緯を教えてもらえますか。
AZUMAファーストアルバムの「フォトン」ができた時に矢野さんに聴いてもらいたくて送らせてもらったんですけど、(矢野さんが)新しいアルバムをどうしようかって段階だった時に私のCDを聴いたと言うのを思い出してくれたみたいで。初めはコンサートに呼んでいただいて、その後にメールで「お願いします」って言われました。
AZUMAさんにとって矢野顕子さんはどういう存在ですか?
AZUMAYMOのワールド・ツアーで矢野さんが「在広東少年」を一緒に歌って演奏してるライヴがものすごくて。YMOのツアーで自分の歌をあんなに自由奔放に歌ってるその動画を見た時に「なんてすごいんだろう!」って。私が音楽をやるにあたってテクノであるけれども歌は歌い上げるようなパフォーマンスをしたいって思っていたので、矢野顕子さんの説得力のあるボーカルがテクノの音楽の中で自由に跳ねまわってる感じって言うのはすごく目標にしてます。
最初にオファーが来た時に不安はなかったですか?
AZUMA頂いたデモは、矢野さん独特と言うか、矢野さんにしか弾けないピアノの弾き語りになってて。それを私が、四つ打ちにするっていう…。でも、私の「フォトン」を聴いて、そういうものを望んでらっしゃるということで、そこがびっくりしたし、不安と言えば不安でしたね。
特に話しあいもなく「おまかせします」って感じだったんですけど、インタビューで「AZUMAさんの良さが光る楽曲を提供しました。」って言っていただいて…。それは薄々感じたんですけど、ご本人から聞くと感動でいっぱいって言うか。それもあって私も自分の曲みたいにやりやすかったです。
AZUMAさんが作ったものを渡した後のやり取りは?
AZUMAピアノと歌入れを見学させてもらえたので、「ピアノのソロを…って言うよりはリズムが乗れる感じがいいよね」みたいな会話はあったんですけど、私は矢野さんが目の前でピアノを弾いてるところをただ見てました(笑)レコーディングが終わって、トラックの抜き差しやミックスのラフはしたんですけど行ったり来たりって言うのはほとんどなかったです。
余談ですが、矢野さんとAZUMAさん声が似てますよね。
AZUMA一緒にやる前から「矢野顕子っぽい」って言われてて。すごい嬉しかったんですけど。歌い方だったり表情の付け方とかもすごい影響受けてるし、歌詞や私が歌いたい感じの一つの理想型が矢野さんなのでとても勉強になりました。
「春咲小紅」を聴いた時に矢野さんにすごく似てると思いました。「春咲小紅」を作った頃の矢野さんが現代にきたら多分あんな感じの曲になるんだろうなって。
AZUMAリアルタイムで聴いてた人が思い出してくれたり、YMOの中にいる矢野さんを思い出してくれたら「やった!」って感じです。あのカバーは敢えて原曲の通りに再現してみたので、それで共通点を見つけてもらえるとすごく嬉しいです。
これからまた他の人に楽曲提供やアレンジで参加することは考えたりしますか?
AZUMA機会があれば!ボーカルだけ参加するとか、曲だけ作って違う人が歌うとか、どこの工程を人にやってもらうかって色んなパターンがあると思うので、色々やってみたいと思います。
「”食わずぎらい”はギャルに聴いて欲しい。」「好きじゃないんですよ、EDM…。全然マッチョになりたくないんで(笑)」
では「食わずぎらい」についてなんですが…
AZUMAもうお聴きになったんですよね?
はい。30回ぐらい聴きました。
AZUMA(笑)
一番気になったのはタイトルと歌詞で、はたして何に対して「食わずぎらい」って言ってるんだろう?って。
AZUMA一言でいうとあれは、究極の片想いソングなんですよ。すごく相手のことが好きすぎて、私はあなたのことをすごく見てるし何でも知ってるけど、あなたは食わずぎらいだから、私のこの気持を食べてくれない、って言う歌なんです。「食わずぎらい」ってタイトルもちょっと変じゃないですか。そう言うのが好きなので。
歌詞の中で使われてる言葉も激しくて「小さく刻んで」とか結構強烈でした。
AZUMAワードが引っかかるって言うのは狙って書く場合も多いです。曲はアグレッシブでゴリゴリのテクノな感じにしたかったので、その上で女の子の気持ちを歌うって言う芯をぶらさないために歌詞と歌の表現とメロディーでバランスを取ります。トラックのノリを大事にしながらちょっと乱暴な言葉だったり、狂った感じだったりを入れることで、トラックにも寄り添えるし、聴く人も想像してくれるかな?と思うので。
歌詞の激しさが一番出ているのが最後のラップだと思うんですが、あそこを聴いた時に「この曲は普通じゃないぞ!」って感じました。
AZUMAラップは前からしたかったので、この曲のアグレッシブさをより出すために絶対入れた方がいいなと思って。私がラップやポエトリーリーディングみたいなものを考える時って、シェイクスピアの悲劇を一人で舞台の上で語る感じだったり、ちょっと頭がおかしくなっちゃって道で叫んじゃうみたいな感じだったり、女子高生が渋谷でわいわいやってる感じだったり。そう言うのを全部ミックスして吐き出したい願望があったんですよ。
資料としていただいた歌詞の中にはそのラップの部分だけなくて…
AZUMAそうですね。
なので今回のインタビュー用に全部書きだしました。
AZUMAうそぉ…?えぇ?それで30回も聴いたんですね。…すごい。えぇぇ…。
これってロックで言う「エモ」か、アイドルで言う「萌え」だと思うんです。
AZUMA「萌え〜」ってやつですか?おぉ!
過去のAZUMAさんの曲を聴かせてもらうとそう言う感情の要素は削ぎ落とされた印象があったんですが。
AZUMAあんまりボーカルが浮きすぎないで、トラックに馴染んでるってことですよね。
それが「食わずぎらい」のラップでは感情が思いっきり前に出てきたのがかなり驚きました。
AZUMA確かに…。もしかしたら顔出ししたって言うところと繋がるかもしれないですね。生々しさと言うか。語ることってすごく身体性があるものだと思うので。何かを出したかったんですかね(笑)
小林プロデューサー(以下、小林)プロデューサーとして一言いいですか?みんな最近のアイドルすごい好きじゃないですか。(僕は)よくあんな恐ろしいものを皆さん好きになれるな、と思うんですよ。少女って本当に怖い生き物だと思うんですよね。気が狂ってるし、ぶっ壊れてるし、論理破綻してるのに計算高いし…。だから「食わずぎらい」のラップって(AZUMA HITOMIが)元から持ってるものや内在しているものがすごく分かりやすい形で出てきたんだと思います。
AZUMA聴きどころはラップの部分と人には言うんですけど、私はそんなに思い切ったことはしてなくて、(普段の)歌詞を作るのと違わないんです。ただ、女の子っていう得体のしれなさや少女の恐ろしさは表現していくべきだと思っていて、この歌詞も女性だから書けたと思うし、女の子が聴いてどう思うかも気になりますね。
では「食わずぎらい」のサウンドについて聴かせて欲しいんですが、これってEDMですよね?
AZUMAあー。EDMってワードが難しいんですよね。自分の曲を説明する時にどう使えばいいか。
一番最初に思ったのがロリーンの「Euphoria」って曲でした。バキバキのエレクトリックサウンドにきれいなメロディを乗せてしっかり歌い上げる、って言う。AZUMAさんの「情けない顔で」もそれに近かったと思うんですが、EDMを意識したところはあったんですか?
AZUMAゴリゴリのトラックに歌はちゃんときれいに歌うって言う意味では「EDM」なんだと思うんですけど…。EDMを聴いてあんまりしっくりはこないんですよ。「自分、これなの?」みたいな。
小林元々彼女の場合は「歌うたい」なので美しく歌う中でテクノをやるとこうなっちゃう。結果論としてたまたま似たような形になったんじゃないですかね? ただ(AZUMA HITOMIを)EDMと呼ぶには全然マッチョじゃないですよ。彼女にとっては踊らせることが主目的ではないから。もちろん踊らせる匂いが強い曲もありますけど、プリミティブテクノから分化していった結果の流れとして近しく見えるって言うことなんじゃなないかな。
AZUMA全然好きじゃないんですよ、EDM…。
(笑)
AZUMAあれだったら歌わなくもていい、って思っちゃうんですよね。
トラックとしてかっこいいから、ってことですか。
AZUMAうん。トラックとしてかっこよくて、それで踊らせる目的なら…と言うか、あんまりかっこいいと思ったことがないんですけど、基本的にEDMに対して思うことは、わざわざ歌が上手い人を連れてきてマッチョなトラックに乗せるって言うのがよく分かんない。
(笑)これ記事で使っても大丈夫ですか?
AZUMAもちろんエレクトロな音楽だったり四つ打ちな音楽が一般に広がってるのはすごく参考になると言うか、自分の音楽にも通じると思うんですけど、特にEDMの文化を意識したりはしなくて。全然聴いたりもしないです…これ、大丈夫かな?(笑)
小林彼女の曲の中でベーシックトラックがむちゃくちゃ過激な曲がわりとEDMっぽく聴こえるじゃないですか。でも、なぜ彼女の曲のベーシックトラックがそんなに過激かって言うと、さっきのポエトリーリーディングと同じなんですよ。彼女に内在してる暴力性だったり、過激さだったり、初期衝動だったりするものがアレンジに出てるだけで…
あ、なるほど。
小林それが暴力的なベーシックトラックになって、でもそこに何故かキラキラした乙女チックなシーケンスが舞ってる。そこがAZUMA HITOMIなんだなって感じだと思うんですよね。
AZUMA全然マッチョになりたくないんで(笑)キラキラはしていたいけど。暴力的な部分とハッピーな部分のどっちもありたいって言うのが、歌詞にも音にも表れてるんだと思います。
EDMって快楽主義的な部分ってあると思うんですね。こういう音が気持ちいいでしょ?こう畳み掛けたら気持ちいいでしょ?って言うのを突き詰めて、実際に聴いたらやっぱりみんな気持ちよかったって言う。そう言う考え方に対してはどう思いますか?
AZUMAそれはYESだと思います。音楽をループさせてノるってことだったり、グルーヴのちょっとしたスネアのタイミングだったりで気持ちいいかどうかをジャッジする、みたいなことは共感と言うか正しい音楽の作り方で、正しい音楽の聴き方っていう印象を受けます。
AZUMAさん自身もそうやって音楽を作ってる?
AZUMAそうですね。とにかくループして気持ちいいものをシーケンスで作りたいから。そう言うあり方は全然いいと思うし、私も踊るの好きなので、そう言う音楽も好きです。
先日のライブで自分の後に出たバンドのライブを見てたAZUMAさんがフロアの誰よりも踊ってて(笑)それを見てダンスミュージックとAZUMAさんの作品をより関連付けて見るようになったんです。
AZUMA私、リスナーとしてはロック出身なんですよ。なのでバンドがやってると楽しくなっちゃって。バンドの音のアンサンブルがすごい好きなんです。それがノリノリの曲だったりグルーヴがかっこいいと「身体が自然に動く造り」になってるんですよ。
それは踊ってるAZUMAさんを見てすごく分かりました。
AZUMA自分の曲が生楽器を使ってなくても、自然に身体が動く音楽にしたい時に思うのは、クラブのノリじゃなくてロックの生の響きや生楽器に対する憧れから、アナログシンセの音でぶっといやつをベースに使ったりします。自分が聴いて踊りたくなるところの発端が生楽器なんですよね。
過去のインタビューでは「J-POPを作る」「歌謡曲」と言うキーワードが繰り返し出てきてたんですが、「食わずぎらい」に関していうとどう言う風に反映されていたと思いますか。
AZUMA私、放っておくとすごい歌謡曲になっちゃうんです。歌いまわしが「こぶし」に変換される時があって(笑)盛り上がれば盛り上がるほど、私の情念みたいなものが演歌の方に行くというか。やっぱり演歌ってすごいんですね。ダサさとかっこよさのせめぎ合いと言うか、圧倒されちゃう感じが興味深くて。人が持ってる声だけで空気を震わせて届けるスタイルに興味があるので、歌う時にそう言う情念を伝える意味で歌謡曲を意識することはあります。
AZUMAさん自身は自分の作る曲をポップだと思いますか。それともハードコアなものだと思いますか。
AZUMAそれは完全にJ-POPですね。本当はギャルに聴いて欲しいんですよ。
え?
小林マイルドヤンキーをどう取り込むかって言う(笑)
全然届くと思いますよ。
AZUMAそうですかね?
さっき話題にしたEDMって郊外のマイルドヤンキー?な人たちには当たってるらしいんですよ。その意味で言うとAZUMAさんの曲が届く可能性はすごくあると思います。
6月28日にミニアルバムリリース!& O-nestもワンマン決定 〜顔出し〜今後の活動について〜
最後に今後の話を聞かせて欲しいんですが、先日のテレビ東京の番組で初めての「顔出し」と言うのがありました。その時の周囲の反響はどうでしたか?
AZUMAすごかったです。facebookのいいねが増えたりとか、twitterの返信もたくさん来て。「うぉぉ!」って感じでしたね。
小林「思ったよりかわいい」って書かれて嬉しかったって言いなさいよ(笑)
AZUMA「がっかりした」って書かれてないかめっちゃ探したんですけど、無かったのでよかったです。
顔を出したと言うことで今後の活動に関しても大きく変わる部分はありますよね。
AZUMA「もうやるしかない」って気持ちは高まりました。顔出しとも繋がるんですけど、矢野さんと一緒にやったことが人生の一大事で。矢野さんは「頑張ってね」とか言わないんですけど、そう言う気持ちを受け止めたので。それが一番変わりました。
音楽活動についてですが、クラブシーンへ出て行く考えはありますか?
AZUMA呼ばれたら行きたいけど「本当に歌っていいですか?」って感じです。やっぱりクラブでやるっていうことは、さっき話した踊らせるための曲をやるってことなので、「情けない顔で」のイントロは良かったけど、歌い出したらお客さんいなくなったみたいなことがありえる訳で…。(クラブシーンに出ることを)最初は思ってたんですよ。マルチネレコードから曲を出したし、トラックがダンスだから。でもトラックに歌が乗っかってると、踊りたい人は違うんだなって言うのが分かったので…。それで諦めたわけじゃないんですけど、そこに行くよりは「私には私のポップス。これが私にとってのメインカルチャーです」って言っていくしかないって思うんで、敢えて細かいジャンル分けのところに突っ込んでいくことはあまり考えなくなりました。
AZUMAさんが行くことで改めて盛り上がるクラブシーンがあるんじゃないかな、って思うんですが。
AZUMAグライムスとかは宅録だけど、クラブ的な要素があって歌もポップでキュートなんだけど、アンダーグラウンドな要素も持ってて、って言う。すごいバランスいいなって思って憧れてるんですけど。クラブだけって言うと…うーん。
どこに主戦場を置くか?って話だと思うんですけどね。
AZUMAそうですね。ただ、今はクラブが…と言うよりは音楽が好きな人に聴いて欲しいですね。
6月にはミニアルバムがリリースされるらしいですが。
AZUMA今、めっちゃ作ってます(笑)
これまでの活動の流れや今回の「食わずぎらい」との関連はあったりしますか?
AZUMA「フォトン」はこれまで生きてきた中のベストアルバムみたいな意味だったんですけど、その後の「食わずぎらい」でダンスミュージック方面へ向かったと思わせて、その後どんなミニアルバムが出るか?…って言うのは、お楽しみで(笑)
本当に今作ってます!的なコメントですね(笑)
小林本当の意味でのファーストアルバムかもしれないです。
AZUMA本当にそうですね。これで「あらためましてはじめましてAZUMA HITOMIです」みたいな感じですね。
どこかで聞いたことがあるようなタイトル(笑)
AZUMAミニアルバムをリリースした後にはTSUTAYA O-nestでのワンマンもあるので楽しみにしててください。
配信限定シングル「食わずぎらい」
2014年4月2日リリース
iTunes
1st ミニアルバム「タイトル未定」
2014年6月リリース
ワンマンライブ【初夏のひとりじっけんしつ 〜1stミニアルバム Release& Birthdayライブ〜】
2014年6月27日(金)
TSUTAYA O-nest
OPEN 18:00 / START 18:30
前売¥3,000 / 当日¥3,500(ドリンク別)
(問)TSUTAYA O-nest 03-3462-4420
リンク
AZUMA HITOMIオフィシャルサイト http://azumahitomi.com/
AZUMA HITOMI staff(twitter) https://twitter.com/AZUMAHITOMI




