2012年〜2014年にかけて、「WORLD TOUR」と銘った自己紹介的なツアーで、ボーダレスな意識を持つ世界のYoutube世代を、生身のパフォーマンスで着実に魅了してきた3人。その地固めがあっての今回は、特別メニューではなく、最新アルバム「COSMIC EXPLORER」を引っさげて行なった日本公演を持っていくカタチ。日本も世界も一緒だよと、今度はPerfumeからボーダレスな意思を発信するものとなった。HAMMERSTEIN BALLROOMは、彼女たちの「夢」であるマディソン・スクエア・ガーデンの目と鼻の先にある。前回の1公演から今回は2デイズに。北米5公演で約1万人が、カワいさとカッコよさを兼ね備えた世界に類を見ないパフォーマンスに熱狂した。
360度に観客を配した日本公演では、巨大な可動式舞台をスペースシップに見立て、まさに宇宙探査に向かうといった姿を表現したが、北米では1ヶ所に観客の目を集中させるステージ形態をとり、高い階段の上から登場した3人が階段を降りる動きで宇宙に進むイメージを表現。その近未来的な演出を支えたのは、リオ・オリンピック閉会式の東京パートを手がけたMIKIKOとライゾマティクスだ。デビュー以前からともに歩んできたMIKIKOは、Perfumeの思いを演出にリンクさせ、ライゾマティクスがそれを最先端テクノロジーで実現化。しかし、軸はあくまでメンバーが人力で制御する動きの美しさだ。この三位一体があって、硬質なデジタル感のなかにその対局の人間味が見えるものとなる。光る衣装とともに、北米公演では光るドローンが初めて投入され、3人を守る宇宙艦隊のようなイメージが作り出されていた。
最新アルバムをたっぷりと聴かせるメニューへの観客の予習は完璧。フリを合わせながら日本語で熱唱する姿は感動的ですらある。北米ツアー用に英語バージョン化された楽曲「Baby Face」では、サプライズを受け取るように一段と盛り上がりを見せた。
毎度驚くのが3人がコミュニケーションの達人であるという点。英語の場面が倍増したこともそうだが、けっして借り物の言葉ではなく、日本語を話すのと同じようにキャラが伝わってくる。さらに彼女たちの「発明」と言えるのが、これまでの海外ツアーでハプニング的に定番化した「通訳さん会場調達」。日本語/英語に堪能なファンを介してのトークで、距離はグンと近くなる。もう一つの「発明」は日本でもお馴染みの「グループ分け」。NYでは、「前日ステーキハウスに行った」ということで、会場の左右を「Steak」と「House」に分け、「Yeah!」と笑顔で一つになった。「ポリリズム」や「チョコレイト・ディスコ」など代表曲も惜しみなく。アンコールは「Our dream will continue!」というあ〜ちゃんのMCで、星屑のイルミネーションが輝く「STAR TRAIN」。「夢」という宇宙へと、また一歩前進したNY2デイズだった。
「カッコいいと思えることが、世界でも同じようにカッコいいと思ってもらえて、またひとつ自信につながりました。予期せぬハプニングさえ、今は宝物が増えた感覚です」とあ〜ちゃん。北米ツアーでの経験が、15万人を動員する10月からのドームツアーでどう花咲くか楽しみだ。
NY公演と同日の2日間、最新アートが集まるチェルシーのギャラリーで、実際に着た衣装やハイヒール、ポスターなどを展示する「A Gallery Experience」も開催された。ライゾマティクスのプロジェクト・マッピングとともに見られる光る衣装の前では、次々と「Oh My Gosh!」というファンの叫び声が上がっていた。会場を訪れたメンバーは、思い出のつまったライブやMVの衣装と久しぶりに対面して感慨深げ。光る衣装第1号「Spring of Life」についてあ〜ちゃんは、「たくさんの線で踊るのは大変でした。線が抜けて一人が止まると他の二人も動けなくなるというMVは、Perfumeを象徴してましたね」と語った。「テクノロジーとの作品作りが実感してもらえてうれしい」とのっち。かしゆかは「制服っぽい衣装のおかげで曲に向かう気持ちがガラッと変わりました」と「Spending all my time」の思い出を語った。「Perfumeは多くの人のこだわりが凝縮されたエンターテインメント」と3人は口を揃えてチームを誇る。そのディティールを間近にし、ファンはさらにPerfume愛を強めたはずだ。