結成から約半年。彼女たちがこれまで見せてきた快進撃は痛快だった。今年2月に初ライヴを敢行するや、春からは都内のライヴハウス各所で立て続けにイベントライヴへ出演。敬愛するGO!GO!7188の元メンバー ユウ(g,vo)が在籍するチリヌルヲワカや、同じくターキー(dr)を擁するla la larksとの対バンも実現。2016年6月には渋谷一帯を舞台に繰り広げられた恒例フェス「YATSUI FESTIVAL! 2016」でも、初見の観衆に圧倒的な衝撃を与えた。
さらに、今回のワンマンに先がけ音楽配信サイト OTOTOYにて初の公式ライヴ音源を配信すると、同サイトの週間シングルチャート”Weekly Ep Best Selling”で1位を獲得。ガールズ・バンドの台頭目覚ましい昨今の音楽シーンに、新たな可能性に満ちた強力なスリーピース・バンドとして、ロックファンの間で話題を呼ぶ2016年最注目の存在となっていた。
そんな最中に開催されたのが、初のワンマンライヴ「はじめての微熱。」だ。会場では初の公式グッズ販売やLINE公式アカウント登録者限定のオリジナルステッカープレゼントなども実施され、開場と同時に待ちわびたファンが殺到。初の音源となる4曲入りライブCD「37°2 LIVE ~ MAY.2016 ~」も販売され、コーナー周辺は開演直前まで長蛇の列を成していた。
ライブ本番は19時半すぎ。The Police「Synchronicity I」をSEに、白のワイシャツにお揃いの赤い腕章という衣装で登場した3人は、これまで各地のステージでもオープニングに披露して観客に衝撃を与えてきた「熱帯魚」より、記念すべき初めてのワンマンライヴをスタート。川本真琴、フルカワミキ、コレサワなど女性シンガーソングライターのサポートを務めるドラム・ボーカル「U」による強烈なリズムに、同じくコレサワ、Chelsy、井上苑子といったアーティストのサポートでもエッジの効いたギターで圧倒する「ひぐちけい」の耳をつんざく轟音。矢野顕子の近作アルバムへのトラック提供などで知られるテクノ系シンガーソングライター AZUMA HITOMIがシンセ・ベースを駆使して奏でる凶暴な重低音と、クラシカルなロックやニューウェイヴの影響を感じさせつつ若者らしいポップセンスを兼ね揃えた、現在のシーンでは他に見ることのない新感覚のサウンドで序盤より観衆を釘付けにしていく。
また、この日はカヴァーも計3曲披露されたが、BECK「Devils Haircut」、XTC「Generals and Majors」、New Order「Krafty」と80〜00年代の名曲を幅広くチョイスしているのもサンナナニならではといえるだろう。一方、本公演で初披露した新曲では、プログレッシヴ・ロックばりの展開が用意されたディープな世界観も。そしてMCでは、結成からわずか半年とは思えない絶妙のやりとりや、3人に倣って自作の赤い腕章を付けていた観衆が多数いたことを指しての「でも、みんなでやると雰囲気がヤバい感じになりかねない」という不敵な発言で笑いを誘うなど、近年では珍しいくらいロックバンド然とした佇まいでファンを楽しませる。
そしてもうひとつ、サンナナニの大きな特徴はAZUMA HITOMIとUのダブルボーカルとなるが、「ダークでいと」「ライトでいと」と冠された2曲では、楽曲に合わせてメインボーカルが入れ替わり、タイトル通り対になった世界観を披露する。さらに、この日はインスト曲も用意されており、それぞれにシーンで活躍するプレイヤーでもある3人がその腕前を見せつける一幕も。そして、先に紹介したライブCD「37°2 LIVE ~ MAY.2016 ~」に収録の「一生懸命シティ」「ひとりじゃ」で本編の幕を下ろした。
最後は鳴り止まない満場のアンコールに応えた3人は、本当に最後の1曲として「おかわり」というアンコールにぴったりなタイトルの楽曲をチョイス。Uの疾走感あふれるリズムにひぐちけいのラップパート、AZUMA HITOMI自ら黄色にペイントしたというショルダーキーボードを担いでのプレイで会場が揺れんばかりの大盛況となり、サンナナニにとって初めてのワンマンライヴは大団円を迎えた。
終演後、SNS等では来場者から「女子3人とは思えないすげーー骨太サウンド」「とんでもないものをみてしまった」「今年行ったライブの中で1,2を争うレベル」「ヤバイ、このバンドほんとに売れちゃう」など絶賛の声が相次いだ彼女たちだが、8月20日には渋谷gee-geで開催されるメンバーのひぐちけいが企画のイベント「神フェス ~noon Area~」夜の部に出演することも発表している。