「何よりも私たちが飽き始めてるんですよ。カンパネラの音に。」-水曜日のカンパネラの現在-
前回の「シネマジャック」は映画区切りのアルバムだったじゃないですか。今回の「私を鬼ヶ島に連れてって」に関しては何かあったんですか?
コムアイそういうテーマは決めなかったんですよ。映画ネタでやって前回困ったのは、最後の方にネタが尽きてきた時に…
Dir.F(笑)
コムアイ慌てて最後に2曲ぐらいババッと作ったんですよ。それが私はすごい嫌で。kenmochiさんも嫌だったと思うし。アルバムを完成させるのに必死だったんですよ。「シネマジャック」は製作期間がかなり短くて、さらにその中でテーマが決まってるって言うのもあってバタバタしてたんですよね。で、それが嫌で今回はもうちょっと長めに制作期間を取りたいって言って。kenmochiさんも前回より多少余裕を持って作ってくれたと思うし。今回8曲あるんですけど、13曲ぐらい作ってそこから削って8曲なんですって言うぐらいにしたくて。8曲全部A面みたいなシングル集みたいなアルバムにしたくて。で、それができたんですよ。前回みたいにテーマを決めなかったのは、一貫性よりも一曲々々が面白くなる方向…一曲々々の重さに任せようみたいなところがあって。でも、できあがってみたらホントバラバラで重たくてマスタリングの時に通しで聴いてウンザリして(笑)
重すぎて、ってことですか?
コムアイ重い、重い、ホント重い。ちょっと疲れるなーって。重すぎて途中で流しちゃうんですよ。なんて言うか…噛み付くような聴き方、ワクワクして聴く時とかって全部の音を拾おうみたいな気持ちになるじゃないですか。歌詞とかね。その歌詞とかを流したくなる感じ。
Dir.Fマスタリングの時の聴き方だから余計疲れたんじゃないの?
コムアイそうなんですよ。別に通して聴くもんじゃない、とも思ってて。
ふんふん。
コムアイすごい疲れるアルバムになったんですけど、今の時代にアルバムを出すんだったら別にこれでも全然悪くないと思ってて。どうせバラで聴いたりとか、一曲ずつDJがかけてそれで好きになってくれたりとかするんだったら…そういうことの方が多いからなぁ。私も好きな曲から聴き始めて3曲ぐらい聴いて…
終わる?
コムアイそう!いつの間にか最後まで聴いてたとかもあるけど、そう言う聴き方してる人の方が多いんじゃないかな?と思ってて。家でCDプレーヤーとかコンポに入れて聴いてって言う人はホントに少ないと思うな。それもあって1曲ごとが重ければ今回はいいのかなと思ってるんですけど。でもホントそれぐらいヘビーですね。
ヘビーって話はOTOTOYのインタビューでもされてたじゃないですか。でも僕はあまりその感じはなかったんですよね。
コムアイあ、ホントですか!?
ヘビーって言葉の捉え方が違うのかもしれないですけど。楽しかったですよ。
コムアイあ、嬉しいです。楽しかったって言ってくれるのホントに嬉しいです。どんどんエンタメがやりたくなるんですよね、水曜日のカンパネラやってて。音楽性が…とかって言うよりもやっぱり楽しいのが一番。水曜日のカンパネラしかできないのは絶対そこだと思いますね。
中身が詰まってる感じはしたんですけど重くはないなぁと思って聴いてましたね。まだ30回ぐらいしか聴いてないですけど…
コムアイそんな聴いたの!?私より聴いてますよ、それ。
Dir.F(笑)
コムアイ私たぶん5回ぐらいしか聴いてない(笑)
不安になるんですよ。インタビュー前に。
コムアイそっかそっか。すごい。何かアドバイスありますか?曲作りとか。
曲作りでですか?
コムアイここがなぁ…こうなったらこれから面白いんじゃないかな?とか。
テックハウス的なことをこれからもやり続けて行くのかな?って言うのは気になってました。あの手のジャンルが今行き場をなくしてる感じはすごくしてて…EDMに喰われちゃって。
コムアイそうですよね。EDMの方が人気あるし、盛り上がるしねぇ。
その行き場所と水曜日のカンパネラが合ったんだろうな、とは思ってるんですよね。
Dir.Fうーん。
コムアイなるほど。
それが面白いな、と思って聴いてたんです。元々テクノが好きだったので”こういう音楽をもう一回やってくれるんだ”って。
コムアイ「(水曜日のカンパネラが)どうやってくれるのかしら?この子たちで運命が変わるかもしれない」って?
僕はそれですね。最初に聴いた時にすごい懐かしいなって思って。
コムアイそういう人多いみたいですね。私は全然分からないけど。
Dir.F歌詞もその辺を突いてるから、って言うのもありますよね。
そうですね。
Dir.F音に関しては僕らまさに今過渡期と言うか、ちょっと次は違うことをやらないと…
コムアイ今ちょっと”支度(したく)”してますよね。
Dir.Fこの4枚目のタイミングで結構知ってもらう人が増えるんじゃないかと勝手に思ってるんですけど。タワーレコードでも旧譜キャンペーンをしてもらっていて、今聴いた人が”いいな”と思えば2枚目、3枚目を買える環境にあるってことは、一気にたくさんの曲をストックしちゃう訳じゃないですか。そこで結構お腹いっぱいになると言うか、こう言ってはアレですけど飽きる人もたぶん出てくるので、それを乗り越えないとダメなのが次の5枚目かな?って。
コムアイうん。何よりも私たちが飽き始めてるんですよ。カンパネラの音に。
これをやり続けて行く人たちなのかな?とも思ってましたが…
コムアイ今回もホントはもっと変えたかったんですよ。3rdができた時点で割と反省してて…
Dir.F(苦笑)
コムアイ「もう、全然ダメだね」って言ってたんですよね。歌唱も相変わらずだし、もっと録音の仕方を変えたり曲の音色も変えなきゃね、って言ってて。それで製作期間を延ばせばいいと思ってたけど、それだけじゃ全然ダメだったなと。元々やりたかったのが…私が入る前の話ですけど、民族音楽に女の子の声が乗ってるみたいな感じで…今回だったら「インカ」とか。ああ言う感じが最初のイメージに近かったんですよ。そこに戻ってきたところが今ちょっとあって、もう2曲ぐらい民族音楽っぽいのもやって。その後ですね。音色もガラッと変わって…エンタメとかポップに昇華されてなかったジャンルの音楽がやりたいなって今すごい飢えてるんですけど。
Dir.Fそれをコムアイが歌うとポップになると僕の中では思ってて。kenmochiさんが今まではコムアイって言うキャラクターを見ながらちょっとずつ合わせていこうって考えてくれたんですけど、たぶんそれもだいぶ落ち着いてきていて「コムアイに歌わせたら何でもポップになるんじゃないか?」って言うところに徐々に考えが切り替わってきている状況ですね。
コムアイ歌にしなきゃいけないってことはないんですよね。歌謡曲史をなぞったものでなくても、決してクオリティの高くない等身大の私の声が乗っていれば、それだけで楽曲の質を度外視してJ-POPになっちゃうと思います。だからkenmochiさんと私がやったことが平行線なほど面白いと思います。偉そうに言ってる…何もわかってないのに。
Dir.Fそうそう。一番最初のテーマも元々インストを作ってたkenmochiさんの曲に歌を乗っけて…カレーライスとか牛丼みたいな感じで。ご飯はご飯で食べられるんですけど、上に何か乗ってたらさらに美味しいみたいなことをやりたいなと思ってて。1stはそれがお互い味付けが間違ってて(笑)それぞれの個は活きてるのに美味しくなっていない部分も結構あったかなと思っています。2nd(「羅生門」)と3rd(「シネマジャック」)でようやくそのバランスが保たれて。4th(「私を鬼ヶ島に連れてって」)で、ちょっとそれがもう世の中的には”牛丼もう飽きちゃった”みたいなところにたぶん行ってて。牛肉と米に関しても組み合わせだけでなく、もう少しそれぞれの品質を考えないとね、って言う感じなんですよね。